消費税は、国内において物やサービスを消費したときにかかる税金です。
税率は10%(消費税7.8%、地方消費税2.2%)です(軽減税率制度により「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」は、8%。)。
ただし、国内における物やサービスの消費であっても消費税のかかる取引(課税取引)と消費税のかからない取引(不課税取引、非課税取引)があります。
課税取引…国内において、事業者が、対価を得て行う、資産の譲渡・貸付・役務の提供をいいます。交換、代物弁済、現物出資など金銭の支払を伴わない資産の引渡しでも、何らかの反対給付があるものは、対価を得て行われる取引になり、課税取引となります。
不課税取引…国外取引や対価を得て行うことに当たらない寄附や単なる贈与、出資に対する配当などをいいます。
非課税取引…土地や有価証券、商品券などの譲渡、預貯金や貸付金の利子など消費税を課すのになじまないものや、住宅の貸付、学校等の教育に関する役務の提供など社会政策的配慮から消費税を課税しない取引をいいます。
不動産取引は、軽減税率制度の対象ではありませんので、適用される消費税率は10%ですが、不動産取引には土地や住宅の売買や賃貸、ローンなど消費税のかかる取引とかからない取引が混在しますので、非常にわかりにくくなっています。
そのため、ここでは個々の不動産取引、関連する取引毎に消費税がかかるか、かからないかについて紹介します。
消費税のかかる取引、消費税のかからない取引具体例
土地の売買・交換
土地は消費される性質を持たないため、土地の売買・交換については売主が法人や個人事業主などの事業者であっても非事業者であっても消費税は非課税とされています。
また、借地権や地上権、地役権、永小作権などの土地の使用収益に関する権利についても同じように、その権利の売買・交換に消費税はかかりません。
なお、土地には、独立して取引の対象となる土地の定着物は含まれませんが、宅地の場合は庭木や石垣など宅地と一体として売買されるものは土地に含まれます。
土地の賃貸借
土地の賃貸借については消費税はかかりません。
土地には、地上権、土地の賃借権、地役権、永小作権などの土地の使用収益に関する権利を含みます。
ただし、賃貸借期間が1か月未満の場合(土地の賃貸借契約で定められた期間が1か月未満が否かで判断します。)、駐車場や施設の利用に伴って土地が利用される場合の賃料には、消費税がかかります。
ただし、事業者が駐車場又は駐輪場として土地を貸す場合、その土地に駐車場又は駐輪場としての地面の整備やフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき(駐車又は駐輪の車両又は自転車の管理をしている場合を除く)は、土地の貸付けに含まれ、消費税はかかりません。
なお、家賃を土地部分と建物部分とに区分している場合でも、家賃の総額が建物の貸付けの対価とされ、建物の利用目的により費税がかかるか否かが決まります。
よって、家賃を土地部分と建物部分とに区分し、事務所として賃貸借している場合は、その総額に消費税がかかり、居住用として賃貸借している場合は、貸付期間が1か月に満たない場合などを除き消費税はかかりません。
借地権の更新料、名義書換料
土地の貸付けの継続のためのものであり、土地の上に存する権利の設定又は土地の貸付けの対価に該当し、非課税取引になるため、消費税はかかりません。
居住用建物の売買・交換
建物の売却は「資産の譲渡」になるため、事業者(法人、個人事業主)として居住用建物を売却する場合は消費税がかかりますが、個人事業主ではない個人が居住用建物を売却しても、売却代金には消費税はかかりません。よって、ともに個人事業主ではない個人間の建物の売買には消費税は発生しません。
また、個人事業主が自宅の売却を行う場合も、事業とは関係ない資産の売却ですので消費税はかかりません。
なお、個人事業主ではない個人が、法人または個人事業主に居住用建物を売却した場合は、売買代金に消費税が含まれているとみなされます。
居住用建物の賃貸借
居住用建物の賃貸借については、賃貸借契約において人の居住用であることが明らかな場合は、消費税がかかりません。ただし、建物賃貸借契約で定められた貸付期間が1か月未満の場合は、居住用建物の賃貸借であっても消費税がかかります。
なお、賃貸借契約において、賃貸の用途が明らかでない場合であっても、その状況からみて人の居住用に供されていることが明らかな場合、消費税はかかりません。
また、家賃を土地部分と建物部分とに区分している場合でも、家賃の総額が建物の貸付けの対価とされ、建物の利用目的により消費税がかかるか否かが決まります。
よって、家賃を土地部分と建物部分とに区分し、居住用建物として賃貸借している場合は、貸付期間が1か月に満たない場合などを除き消費税はかかりません。
事務所・店舗など非居住用建物の売買・交換
事務所・店舗など非居住用建物の売買・交換は、事業者が事業として行う資産の譲渡、購入になりますので消費税がかかります。
事務所・店舗など非居住用建物の賃貸借
事務所・店舗など非居住用建物の賃貸借は、事業者が事業として行う資産の貸借になりますので消費税がかかります。
なお、家賃を土地部分と建物部分とに区分している場合でも、家賃の総額が建物の貸付けの対価とされ、建物の利用目的により消費税がかかるか否かが決まります。
よって、家賃を土地部分と建物部分とに区分し、事務所や店舗など事業用として賃貸借している場合は、その総額に消費税がかかります。
仲介手数料・代理報酬にかかる消費税
宅地建物取引業者に支払う報酬は消費税のかかる取引ですので、宅地建物取引業者が課税事業者である場合は、依頼者は10%の消費税を上乗せした報酬額を支払います。
例えば、土地3,000万円、建物1,000万円(税別)の総額4,000万円の不動産を購入した場合、仲介手数料は、消費税込みで、
4,000万円×3%+6万円=1,260,000円
1,260,000円×1.1=1,386,000円
となります。
一方、宅地建物取引業者が免税事業者である場合は、消費税の申告義務がなく、本来であれば報酬額に消費税を上乗せして請求することができません。しかし、宅地建物取引業者は必要経費に対し消費税を支払っているため、「課税仕入れに係る消費税相当額」として報酬額に4%の消費税を上乗せして請求することが認められています。
よって、依頼者は報酬額に4%の消費税を上乗せした額を支払う必要があります。
例えば、土地3,000万円、建物1,000万円(税別)の総額4,000万円の不動産を購入した場合、仲介手数料は、消費税込みで、
4,000万円×3%+6万円=1,260,000円
1,260,000円×1.04=1,310,400円
となります。
なお実際は、ほとんどの宅地建物取引業者が課税事業者ですので、報酬には10%の消費税がかかると考えておいた方が良いでしょう。
課税事業者、免税事業者
法人や事業を営む個人は、原則として消費税を納付する義務がありますが、事業規模の小さい事業者は、納税事務の負担を軽減させるため消費税の納税が免除されています。この消費税の納税を免除されている事業者を免税事業者といいます。
具体的には、次の2つの条件を満たした事業者が免税事業者になります。
①基準期間における課税資産の譲渡等の額が1,000万円以下
②特定期間における課税資産の譲渡等の金額または支払った給与等(未払いのもの除く)のいずれかの金額が1,000万円以下
基準期間とは、個人事業主の場合は当年の前々年1月1日から12月31日までの期間、法人の場合は、前々事業年度(前々事業年度が1年未満の場合は、当事業年度開始の日の2年前の日の前日から1年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいいます。
特定期間とは、個人事業主の場合は、当年の前年1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は、原則として、前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。
なお、免税事業者の条件に該当する事業主であっても、課税事業者になることができます。
ローン関連取引
ローン関連取引としては、借入資金、借入利息、保証料、ローン事務手数料、ローン繰上返済手数料、団体生命保険料などがあります。
借入資金
資金の借入は返済すべきもので、消費しませんので消費税はかかりません。
借入利息
非課税取引に該当しますので、消費税はかかりません。
ローン保証料
信用の保証料は非課税取引になりますので、消費税はかかりません。
ローン事務手数料
ローンの事務手数料はサービスの消費になりますので、消費税がかかります。
ローン繰上返済手数料
ローン繰上返済手数料には、
(1)繰上返済した額に一定率を乗じて計算するもの
(2)繰上返済した額にかかわらず一定額であるもの
の2つのパターンがあります。
(2)の繰上返済額にかかわらず定額の手数料がかかるものは、繰上返済手数料を支払うことで繰上返済という役務の提供を受けたものとして消費税がかかり、(1)の繰上返済した額に一定率を乗じて計算するものは、繰上返済により失われた利益を補填する損害賠償金としてと考えられ、消費税はかかりません。
団体生命保険料
保険料や共済掛金を対価とする役務の提供は非課税取引とされていますので、支払い保険料や共済掛け金には消費税がかかりません。
また、受け取った生命保険料は、保険事故の発生に伴い受け取るものであるから、資産の譲渡等の対価に該当しないため、不課税取引となり、消費税はかかりません。
ただし、保険代理店が受け取る代理店手数料や損害調査等にかかる手数料は、課税取引になり、消費税がかかります。
登録免許税や印紙、切手、証紙
登録免許税は国や地方公共団体、公共法人、公益法人等が法令に基づき行う一定の事務に係る役務の提供で、非課税取引とされていますので、消費税はかかりません。
印紙や切手、地方公共団体が行う証紙の譲渡も非課税取引とされているため、消費税はかかりません。
ただし、印紙や切手は、郵便局や印紙売渡し場等、一定の場所以外での譲渡は課税取引となるため、消費税がかかります。
不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物の購入、建物の建築などで不動産を取得したときにかかる税金で、不動産の取得に関連して発生する費用で土地や建物の取得原価に算入できますが、不動産取得税に対して消費税はかかりません。
精算される固定資産税、都市計画税
固定資産税や都市計画税は、1月1日現在の不動産の所有者に課されます。
そのため、土地や中古住宅の売買では、所有権移転日までの経過日数に応じて、売主、買主それぞれが固定資産税と都市計画税を負担する慣行があります(多くは1月1日を起算日としますが、関西では4月1日を起算日とすることもあります。)。
これらの清算金は、その実態は税金ですが、買主は1月1日現在に於いて不動産の所有者ではないため固定資産税と都市計画税の納税義務者になれません。そのため、固定資産税や都市計画税の清算金は売買代金の調整とされます。
よって、建物部分の調整金については、課税取引とされ、消費税がかかります。
建物賃貸借契約の解除に伴う立退料
賃借人が賃貸人から受領する立退料(仲介する宅地建物取引業者を経由する場合を含む。)は、賃借権の消滅に対する補償や営業損失又は移転等の実費補償などであり、資産の譲渡等の対価ではないため、不課税取引になり、消費税はかかりません。
ただし、賃借人の地位を賃貸人以外の第三者に譲渡し、対価を受け取った場合は、その名目が「立退料」であっても、賃借権の譲渡に係る対価となるため、資産の譲渡等の対価に該当し、課税取引になり、消費税がかかります。
司法書士、土地家屋調査士への報酬
司法書士や土地家屋調査士への報酬は、役務の提供を受けたことに対する対価ですので、課税取引になり、消費税がかかります。
建築確認申請料
行政に対する手数料は非課税取引とされていますので、消費税はかかりません。
賃貸借契約の終了に伴って返還される敷金・保証金
事業用の建物の賃貸借契約に伴い支払う敷金や保証金、権利金、更新料などのうち、契約の終了により返還されるものは、資産の譲渡等の対価に該当しないので不課税取引になり、消費税はかかりません。
賃貸借契約の終了に伴って返還されない敷金・保証金
事業用の建物の賃貸借契約に伴い支払う敷金や保証金、権利金、更新料などのうち、返還されないものは、権利設定の対価となり、資産の譲渡等の対価として課税取引となりますので、消費税がかかります。
ただし、住宅用建物の賃貸借契約に伴い支払う敷金や保証金、権利金、更新料などのうち、返還されないものは、非課税取引となり、消費税はかかりません。
マンションの管理組合が徴収する管理費・修繕積立金
マンションの管理組合は、マンションの区分所有者を構成員とする組合です。
そのため区分所有者がマンションの管理組合へ支払う管理費や修繕積立金は、区分所有者が自らを構成員とする組合に支払うものであり、事業の対価に該当しません。
よって、マンション管理組合に支払う管理費・修繕積立金は、不課税取引となり、消費税はかかりません。また、管理組合が組合員に駐車場の貸付けをしたときの賃料も不課税となります。
ただし、組合員以外の者に貸付けたことにより受け取る賃料は課税取引となり、消費税がかかります。
火災保険料や地震保険料
保険料を対価とする役務の提供は非課税取引とされているため、消費税はかかりません。
また、受け取る火災保険金や地震保険金は、保険事故の発生に伴い受け取るものであるから、資産の譲渡等の対価に該当しないため、不課税取引となり、消費税はかかりません。