停止条件とは?解除条件との違い、停止条件付売買契約、解除条件付売買契約の文言例

停止条件付の意味、解除条件との違いなどをわかりやすく解説

不動産取引の中で絶対に覚えておいて欲しい言葉の一つに「停止条件」と「解除条件」があります。

これらの言葉は非常に分かりにくく、不動産業界で何年も実務に携わっている人でも間違った認識を持っている人がたまにいます。

特に停止条件は、言葉のイメージからすると「停止する条件(条件が成立したら契約が停止する)」と思っている人も多いです。

停止条件も解除条件も条件が成立しない場合、どちらも「決済できない」という結論になりますが、契約内容や権利関係が複雑で、利害関係者間でトラブルが生じた場合、契約の効力発生時期はいつか?など、停止条件、解除条件の条件の意味が非常に重要になります。

そのためここでは、停止条件とは何か?、解除条件との違い、停止条件付売買契約の文言例などを紹介します。

停止条件とは

停止条件とは、「宝くじに当たったら(仮定)、この指輪をあげる」というように、将来起こるかどうか不確実な仮定が成就することで、約束の効力を発生させる条件のことをいいます。
仮定が成就しないことが確定したら、約束が不成立となり、最初から約束がなかったことになります。

停止条件:その仮定(条件)を充たしたときに約束の効力が「発生」する。

「停止条件」というと、効力を「停止させている条件」といったイメージを持ちがちですが、実は反対で、「停止していた効力を発生させる条件」、「ある条件が整うまで約束の効力の発生を停止させておくもの」のことです。

このように停止条件は、条件が成就していない段階では効力が発生しておらず、効力の発生は原則として、条件成就以降になります(民法127条1項、3項)。

よって、停止条件付き不動産売買契約では、条件とされている仮定が成就するまでは法的な効力は発生しませんので、それまでは購入代金を支払う義務はなく、不動産仲介手数料を請求されても支払う必要はありません。さらに、仮定が成就しなかった場合は、契約は無効となります。

解除条件とは

解除条件とは、「ローンの本審査に通らなければ、売買契約は自動的に解除」など、将来の不確実な事象の発生により、法律行為の効力が消滅する場合の当該不確実な事象のことです。
解除条件付契約では、契約の段階で売買の効力が発生し、将来の不確実な事象が発生しないかぎり契約の効力は有効ですが、不確実な事象が発生することで契約は解除され、契約の効力が無くなります。

停止条件は、将来の不確実な事象の発生により法律の効果を生じさせますが、解除条件は、将来の不確実な事象の発生により法律の効果を消滅させます。この点が大きな違いです(民法127条1項、2項)。ただし、停止条件、解除条件のいずれの条件であっても、不確実な将来事象の未発生の間は、当該事象の発生によって生ずる利益は保護されます(同法130条)。

停止条件付売買契約、解除条件付売買契約の具体例

停止条件付売買契約の例としては、

・不動産購入資金の融資について本審査が通った場合、自動的に契約の効力が発生する売買契約
・地主の承諾を売買契約の成立条件とする借地権付き建物の売買契約(借地権付建物売買契約)
・地主の承諾を売買契約の成立条件とする借地権売買契約
・農地を第三者に農地以外に転用して売却する、農地法5条の許可が必要な売買契約
・土地の買主と土地の売主が売主または売主の指定する建築業者との間で一定期間内に土地上に建築する建物の建築請負契約が成立した場合に土地売買契約の効力が生ずる建築条件付土地の売買契約
・任意売却で債権者の抵当権抹消の同意を停止条件とする売買契約

などがあります。

解除条件付売買契約の例としては、

・不動産購入資金の融資について、本審査に通らなかった場合、自動的に契約が白紙解除になる売買契約
・土地の買主と土地の売主が売主または売主の指定する建築業者との間で一定期間内に土地上に建築する建物の建築請負契約が成立しなかった場合に土地売買契約の効力が消滅する建築条件付土地の売買契約
・融資利用特約における融資が不成立になった場合に契約解除できる売買契約
・買換特約における元の所有地が売却ができなかった場合に新しい土地の購入契約を解除できる売買契約

などがあります。

条件付契約とする場合で停止条件付にしなければならないケース

条件付契約とする場合で停止条件付にしなければならないケースは、下記のように許可がないと契約が無効となるまたは解除されるケースです。

農地売買

農地を農地のまま売買する場合、原則として農業委員会の許可を受ける必要があります(農地法3条)。
また、農地を農地以外の用途に転用するために売却する場合は、原則として、都道府県知事の許可が必要になります(農地法5条)。
許可を受けないでした売買行為はいずれの場合も無効となります。

そのため農地売買では、売主買主の売買の意思が明確であっても、農地法3条や5条の許可が取れる前に売買契約はできません。契約しても、売買は無効となってしまいます。

そこで、農地売買の場合、停止条件付の契約がよく利用されます。

停止条件付契約の場合、条件の成就(農地法3条、5条の許可)の前に契約を結んでも、条件の成就の後に契約の効果が発生しますので、農地法3条、5条による許可前に売買契約を結んでも、売買契約自体は無効にならないためです。

農地の売買で解除条件付契約とした場合、契約の効力は契約時(農地法3条、5条の許可前)の発生となりますので、無許可で契約したことになり、売買契約が無効となってしまいます。

借地権付建物売買

借地権付建物の売買においても停止条件付契約が利用されることがあります。
借地権付建物の売買においては、借地権の売買もセットになりますが、借地権の譲渡には地主の事前の承諾が必要です(民法612条1項)。地主の承諾なく借地権が売買された場合、地主は契約を解除することができます(同2項)。

そのため、地主の承諾なく借地権付建物の売買契約はできませんが、地主の承諾を停止条件とした停止条件付の売買契約は可能です。

地主の承諾を停止条件とする借地権付建物売買であれば、地主の承諾前に契約を結んでも、地主の承諾を得られるまでは契約の効力は発生しませんので、地主に無断で売買契約したことにはなりません。

なお、建築条件付土地売買やローン特約付不動産売買契約などにおいては、停止条件でも解除条件でもその効果は実質的に同じになります。

停止条件付売買契約書、解除条件付売買契約書の文言 具体例

(停止条件付売買契約 例)

借地権付建物売買契約書

 売主○○○○(以下、売主と言う)と、買主〇〇〇〇(以下、買主と言う)は、次のとおり、後記借地権付建物につき次の通り停止条件付売買契約を締結する。

(売買)
第1条 売主は、買主に対し、第4条第1項に定める地主の承諾が得られたこと又は第4条第2項に定める地主の承諾に代わる裁判が確定したことを停止条件として、物件目録記載の建物を、同目録の土地についての借地権とともに、下記の価格にて売り渡し、買主は、これを買い受ける。
(1) 建物       〇〇円(消費税込み)
(2) 借地権      〇〇円
(3) 売買代金総額   〇〇円(消費税込み)
(手付金)
第2条 買主は、売主に対し本契約締結と同時に手付金〇〇万円を支払い、売主は、これを受領した。
2 前項の手付金は、第〇条に定める売買残代金の支払いのとき売買代金の一部に充当する。
3 手付金は解約手付とし、売主は手付金の倍額を現実に提供し、買主は手付金を放棄して、本契約を解除することができる。ただし、その相手方が本契約の履行に着手した後はこの限りではない。

(借地権譲渡の承諾)
第4条 売主は、〇〇年〇〇月〇〇日までに本件借地権譲渡についての地主の承諾を書面にて得るものとする。
2 前項の期限までに承諾が得られない場合、売主は翌日から〇日以内に借地借家法第19条第1項に定める地主の借地権譲渡の承諾に代わる許可の裁判を申し立てる。

(停止条件の不成就等)
第8条 地主の承諾が得られなかった場合、本契約は当然に解除されたものとみなし、売主は買主に対し、第2条第1項により受領した手付金を無利息にて返還する。
2 前項の場合、売主及び買主は本契約に関して各々が支出した費用の返還及び損害賠償の請求を行なわない。ただし、売主の故意又は重過失によって、地主の承諾が得られなかった場合、売主は買主に対し、第2条第1項により受領した手付金の倍額を支払う。
3 本件に関し、地主が借地借家法第19条第3項の申立てをし、地主が譲受人になった場合は、第1項の規定を準用する。

第1条は「売主は、買主に対し、第4条に定める地主の承諾が得られたとき又は同第2項に定める地主の承諾に代わる裁判が確定したときは、物件目録記載の建物を、同目録の土地についての借地権とともに、下記の価格にて売り渡し、買主は、これを買い受ける。」といった言い回しにしている契約書もあります。

また、第8条にあるように既に受領している金員の扱い、支出した費用や損害賠償請求等の扱いについても記載します。

一方で、建築条件付き売買で、解除条件とするパターンの契約書の条文は以下のようになります。

(解除条件付売買契約 例)

建築条件付土地売買契約書

 売主○○○○(以下、売主と言う)と、買主〇〇〇〇(以下、買主と言う)は、次のとおり、後記土地につき次の通り建築条件付土地売買契約を締結する。

第1条 売主は、標記の土地を〇〇円をもって買主に売渡し、買主はこれを買受けた。

第3条 買主は、本土地上に建物を建築するための工事請負契約を、別途、○○株式会社と締結する。

第5条 本契約締結の日から○日以内に、第3条に定める建築工事請負契約を締結しないときは、本契約は解除となる。

第7条 第3条により本契約が解除された場合、売主は、受領済みの金員を無利息にて速やかに買主に返還する。
2 売主は、第3条により本契約が解除されたことを理由として、買主に対し損害賠償等の請求はしないものとする。

第5条の「○○のときは、本契約は解除となる」という部分が解除条件の言い回しです。

停止条件でも解除条件でも、条件が成就した場合、成就しなかった場合にそれぞれどうなるかということを売主と買主がきっちり理解し、契約書に明記した上で契約することが重要となります。

停止条件の未成就、解除条件の成就の場合の金員の取扱

停止条件の未成就、解除条件の成就により契約は解消となりますが、条件の未成就、成就までに発生した手付金や仲介手数料などの金員はどのようになるのでしょうか。

ここでは、停止条件の未成就、解除条件の成就により契約解消となった場合の既に発生した金員の取扱について解説します。

停止条件の未成就の場合の手付金、仲介手数料

停止条件付契約では、停止条件が成就することで初めて契約の効力が発生します。すなわち、売買契約を締結しても、停止条件が成就しない限り、契約の法的効力は発生していません。

よって、停止条件が成就しなかった場合は、すでに授受された手付金は買主に返還し、仲介手数料は売買契約の成立により発生するものですので、買主や売主が仲介手数料の全部または一部をすでに支払っている場合は、媒介した宅地建物取引業者は仲介手数料を返金しなければなりません。

ただし、停止条件が未成就でも媒介行為があったことを盾に、仲介手数料の一部を請求してくる宅地建物取引業者もあります。契約解消後のトラブルを防止するためにも、停止条件不成就のときの手付金や仲介手数料、その他経費の取扱いについて売買契約書や媒介契約書に明記しておくことをおすすめします。

停止条件付売買契約における手付金
民法において手付には、証約手付、違約手付、解約手付の3つがあり、当事者間でどの内容の手付にするかを決めることができます。

そして、特段の定めがない場合は、解約手付と推定され、解約手付であれば、売買契約後であっても、売主、買主の一方が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄し、売主は預かった手付金及び手付金と同額を買主に支払う(手付倍返し)ことで、契約解除することができます。

よって手付金は、契約の成立時(契約の効力発生時)に授受されるべきものになります。

しかし、停止条件付売買契約であっても、停止条件が成就する前(契約の効力が発生する前)に手付金の授受がされていることが多々あります。

そのため、手付金と売買契約の関係が分かりにくくなっています。

この点に関し、停止条件が成就する前でも、売主、買主の一方が契約の履行に着手する前であれば、手付を放棄することで契約を解消することができると解されています。

解除条件の成就の場合の手付金、仲介手数料

解除条件付契約では、解除条件が成就すると、その時から契約の効力が消滅します(民法127条2項)。停止条件と違い、契約締結時に契約は成立しています。

そのため、解除条件が成就しない限り契約は有効で、宅地建物取引企業者には報酬請求権が発生し、売主、買主は仲介手数料を支払う義務があります。

しかし、解除条件付契約では当事者の合意により、解除条件が成就した場合の法律の効力を解除条件が成就した時以前にさかのぼらせることができます(同法3項)。

そのため不動産売買の実務においては、多くの場合、解除条件が成就した場合の法律の効力を契約時にさかのぼらせ、契約を自動的に消滅させることにしています。

よって解除条件が成就した場合、契約の効力は契約時にさかのぼって消滅し、それまでに授受された手付金や仲介手数料がある場合は無条件で返金する旨を解除条件付売買契約や媒介契約で定めている場合は、解除条件の成就により手付金は買主に、仲介手数料は売主や買主に返金する必要があります。

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