不動産売買・交換、賃貸の媒介契約仲介手数料、代理契約手数料・報酬上限額の計算方法

不動産売買・交換、賃貸の媒介にかかる仲介手数料、代理報酬の上限額の計算

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宅地建物取引業者に宅地や建物の売買や交換、貸借の代理または媒介を依頼し、契約が成立したときは、依頼者(売主、買主、交換主、貸主、借主)は宅地建物取引業法に基づき、報酬を支払うことになります。

この報酬は成功報酬ですので売買や交換、賃貸借の契約が成立しない限り、原則として依頼者には報酬の支払い義務は発生しません。

契約解除・解約時、契約後キャンセルしたときの仲介手数料

また、報酬額を宅地建物取引業者が自由に決められるとすると、不相当な報酬を請求する業者が現れるため、国土交通省は、消費者保護の観点から「宅地建物取引業者が宅地または建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」を定め、宅地建物取引業者が宅地建物の売買・交換、貸借の代理・媒介により受けることができる報酬の上限額を定めています。

ここでは依頼者が宅地建物取引業者に支払う媒介、代理報酬の範囲、上限額の計算、消費税ついて売買・交換、賃貸借、さらにそれぞれの代理、媒介ごとに具体例をあげて解説します。

不動産の取引態様 代理と媒介、仲介 それぞれの意味、違い

宅地・建物とは?

宅地建物取引業者に支払う手数料計算のもとになる宅地、建物とは、次のようになります。

宅地の定義、宅地とは?

次のいずれかの要件を満たす土地は宅地になります。

(1)現在建物が建っている土地
登記簿上の地目は関係ありません。あくまで現況で判断しますので、登記簿上の地目が田や畑であっても、建物が建っている土地は宅地になります。

(2)現在建物は建っていないが、建物を建てる目的で取引する土地
登記簿上の地目は関係ありません。

(3)用途地域内の土地
ただし、用途地域内であっても、現在道路、公園、河川、水路、広場に利用されている土地は宅地ではありません。
よって、現在道路、公園、河川、水路、広場でない限り、予定地であっても宅地になります。

※用途地域とは、住みやすい街づくりのために都市計画区域内の市街化区域において建物の利用目的に応じて地域を分けたもので、都市計画において最も基本的なもので市街化区域内に必ず定められます。

建物の定義、建物とは?

建物とは、屋根と柱、壁がある構築物になります。
一戸建てだけでなく、マンションの一室など建物の一部も建物になります。
また、住宅だけでなく倉庫、工場なども建物になります。

依頼者が宅地建物取引業者に支払う代理、媒介手数料・報酬の範囲

契約成立による代理、媒介手数料・報酬

依頼者は、契約成立により宅地建物取引業者に手数料を支払う義務が発生しますが、その上限額は、「宅地建物取引業者が宅地または建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」に定められています。

手数料以外に必要経費は請求できる?

原則
宅地建物取引業者が依頼者に請求できるものは、契約が成立したときの報酬だけです。契約成立のためにかかった経費であっても、原則として、報酬とは別に経費を請求することができません。

すなわち依頼者が負担するのは、契約が成立したときの報酬(成功報酬)だけであり、契約が成立しても、成立しなくても、原則として宅地建物取引業者にかかった費用を負担することはありません。

例外

  1. あらかじめ依頼者の承諾のある次のものは、契約が成立しても、成立しなくても依頼者が負担します。
    ・依頼者から依頼されて行った広告の費用
    ・依頼者からの特別の依頼により発生する費用(遠隔地の現地調査や空家の特別な調査等にかかる費用など)
  2. 売買代金や交換評価額が400万円以下(消費税抜き)の宅地や建物で、通常の売買・交換の代理や媒介よりも現地調査等の費用が必要な場合、売主や交換を行う依頼者が支払う現地調査等の費用(詳細は「低廉な空家等(売買代金・交換評価額が400万円以下)の売買・交換の媒介・代理における特例」)
  3. 依頼者による媒介契約違反があった場合の違約金、専任媒介契約で依頼者が相手方を見つけた場合に「専任媒介契約の履行のために要した費用の償還を請求できる」と媒介契約で定めていた場合に支払う費用

など、契約が成立していない場合でも媒介契約に基づき支払が発生することがあります。

仲介手数料・代理手数料にかかる消費税

宅地建物取引業者に支払う手数料は消費税のかかる取引ですので、原則として、依頼者は手数料に10%の消費税を上乗せして支払います。

宅地建物取引業者が免税事業者であるときの手数料にかかる消費税の例外

媒介契約にかかる仲介手数料、代理契約にかかる手数料の上限額

宅地建物取引業者に支払う報酬の限度額の計算方法は「宅地建物取引業者が宅地または建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」に定められていますが、次の3つの点に気を付ける必要があります。

  1. 売買・交換契約と賃貸借契約では手数料の計算方法が異なる。
  2. 宅地建物取引業者への依頼が媒介か代理かにより手数料の計算方法が異なる。
  3. 宅地建物取引業者が課税事業者であれば10%の消費税、免税事業者であれば4%の消費税が報酬額にかかる。

売買・交換契約が成立した場合に支払う手数料の上限額

媒介により売買・交換契約が成立した場合に支払う仲介手数料の上限額

不動産業者の媒介により売買・交換の契約が成立した場合に依頼者が支払う仲介手数料の上限額は、次の仲介手数料料率により求めた金額に消費税を加算した金額になります。

売買価格または交換の評価額(消費税抜き) 仲介手数料率
200万円以下の部分の金額 5%
200万円超~400万円以下の部分の金額 4%
400万円超~の部分の金額 3%

※交換する2つの不動産の評価額に差がある場合は、高い方の金額が仲介手数料計算の基礎とする交換の評価額になります。

不動産の売買価格または交換の評価額が1億円(消費税抜き)の場合、

200万円×5%+200万円×4%+9,600万円×3%=306万円

が、仲介手数料の上限額となります(消費税は別途必要)。

なお、売買価格または交換の評価額が400万円を超える場合の仲介手数料は、簡略的に「売買価格または交換の評価額×3%+6万円」で計算できます。

1億円×3%+6万円=306万円

いずれの方法でも計算結果は同じになります。

媒介により売買が成立した場合の仲介手数料の上限額計算の具体例

土地付建物の売買代金が消費税込みで4,650万円(うち土地代金は3,000万円)の場合。
土地の売買には消費税がかかりませんので、内訳は次のようになります。
土地代金:3,000万円
建物代金:1,650万円(税込み)

①建物代金から消費税を控除した金額を算出
 1,650万円÷1.1=1,500万円

②土地と建物の売買代金を合算
 3,000万円+1,500万円=4,500万円

③消費税抜きの売買代金に仲介手数料率を適用し仲介手数料を算出
 4,500万円×3%+6万円=141万円

④③で求めた仲介手数料に消費税を加算し報酬限度額を計算
 不動産業者が課税事業者の場合:141万円× 1.1=1,551,000円
 不動産業者が免税事業者の場合:141万円×1.04=1,466,400円

が、媒介により売買が成立した場合の仲介手数料の上限額になります。

この上限額は、売主、買主とも同額です。

媒介により交換が成立した場合の仲介手数料の上限額計算の具体例

Aが所有する交換評価額4,500万円(消費税抜き)の不動産とBが所有する交換評価額5,000万円(消費税抜き)の不動産の交換が宅地建物取引業者の媒介により成立した場合。

交換の場合、評価額の高い方の金額に基づき仲介手数料を計算できます。

①高い方の交換評価額に仲介手数料率を適用し仲介手数料を算出
 5,000万円×3%+6万円=156万円

②①で求めた仲介手数料に消費税を加算し報酬限度額を計算
 不動産業者が課税事業者の場合:156万円× 1.1=1,716,000円
 不動産業者が免税事業者の場合:156万円×1.04=1,622,400円

が、媒介により交換が成立した場合の仲介手数料の上限額になります。

この上限額は、交換する両者とも同額です。

代理により売買・交換契約が成立した場合に支払う仲介手数料の上限額

代理により売買契約や交換契約が成立した場合の手数料は、媒介による仲介手数料の2倍になります。

代理により売買が成立した場合の手数料の上限額計算の具体例

土地付建物の売買代金が消費税込みで4,650万円(うち土地代金は3,000万円)の場合。
土地の売買には消費税がかかりませんので、内訳は次のようになります。
土地代金:3,000万円
建物代金:1,650万円(税込み)

①建物代金から消費税を控除した金額を算出
 1,650万円÷1.1=1,500万円

②土地と建物の売買代金を合算
 3,000万円+1,500万円=4,500万円

③消費税抜きの売買代金に仲介手数料率を適用し仲介手数料を算出
 4,500万円×3%+6万円=141万円

④③で求めた仲介手数料を2倍し、消費税を加算し報酬限度額を計算
 不動産業者が課税事業者の場合:141万円×2× 1.1=3,102,000円
 不動産業者が免税事業者の場合:141万円×2×1.04=2,932,800円

が、代理により売買が成立した場合の手数料の上限額になります。

なお、宅地建物取引業者が売買の相手方からも報酬を受ける場合であっても宅地建物取引業者の受け取ることのできる報酬額の上限は④の金額になりますので、宅地建物取引業者が売買の相手方から報酬を受ける場合は、④の額から宅地建物取引業者が売買の相手方から受ける報酬額を控除した金額が依頼者の支払う仲介手数料の上限額になります。

代理により交換が成立した場合の手数料の上限額計算の具体例

Aが所有する交換評価額4,500万円(消費税抜き)の不動産とBが所有する交換評価額5,000万円(消費税抜き)の不動産の交換が宅地建物取引業者の代理により成立した場合。

交換の場合、評価額の高い方の金額に基づき仲介手数料を計算できます。

①高い方の交換評価額に仲介手数料率を適用し仲介手数料を算出
 5,000万円×3%+6万円=156万円

②①で求めた仲介手数料を2倍し、消費税を加算し報酬限度額を計算
 不動産業者が課税事業者の場合:156万円×2× 1.1=3,432,000円
 不動産業者が免税事業者の場合:156万円×2×1.04=3,244,800円

が、代理により交換が成立した場合の手数料の上限額になります。

なお、宅地建物取引業者が交換の相手方からも報酬を受ける場合であっても宅地建物取引業者の受け取ることのできる報酬額の上限は④の金額になりますので、宅地建物取引業者が交換の相手方から報酬を受ける場合は、④の額から宅地建物取引業者が交換の相手方から受ける報酬額を控除した金額が依頼者の支払う仲介手数料の上限額になります。

低廉な空家等の売買・交換の媒介・代理における手数料の特例

遠隔地等の老朽化した空家の現地調査等には通常より費用と手間がかかり、物件価額も低いことから売買・交換を媒介・代理する立場からすると、成約しても手数料が伴わず赤字になってしまいます。このようなことから、売買代金や交換評価額が400万円以下の低廉な空家等の媒介・代理については、通常の報酬に加え、現地調査等の費用を請求することができる特例が設けられています。

「低廉な空家等(売買代金・交換評価額が400万円以下)の売買・交換の仲介手数料・代理手数料の特例」の詳細こちら

賃貸借契約が成立した場合に支払う手数料の上限額

媒介により賃貸借契約が成立した場合に支払う仲介手数料の上限額

貸借の場合の仲介手数料の上限額は、原則として、賃料を基準に計算します。
使用貸借の場合は賃料がありませんので、「通常の借賃」が計算基準になります。

「事務所や店舗などの非居住用建物や宅地」と「居住用建物」では計算方法に違いがありますので、両者を分けて解説します。

事務所や店舗などの非居住用建物や宅地の賃貸借の手数料上限額

媒介により非居住用建物や宅地の賃貸借契約が成立した場合

事務所や店舗など非居住用の建物や宅地の賃貸借契約が成立した場合、宅地建物取引業者が受け取ることのできる報酬額は、

①賃料
②権利金

のいずれかをもとに計算し、高い方の金額を宅地建物取引業者が選択できます。

権利金の授受が無い場合は、賃料だけで計算します。

権利金とは、権利設定の対価として支払われる金銭で、返還されないものをいい、名目を問いません。

【具体例】
1か月分の賃料が110万円(消費税込み)
権利金550万円(消費税込み)
の場合

①賃料に基づく仲介手数料の上限額の計算
賃料の1か月分の金額が、宅地建物取引業者が受け取ることのできる仲介手数料の上限額になります。

110万円÷1.1=100万円…消費税抜き1か月分家賃

課税事業者の場合:100万円×1.1=110万円
免税事業者の場合:100万円×1.04=104万円

となります。

この際に気をつけなければならないことは、宅地建物取引業者が貸主、借主から受ける報酬の内訳の割合は決まりが無く、報酬の総額が家賃の1か月分以内であれば貸主、借主からどのような割合で報酬を受領しても問題ないということです。

依頼者は、自分が貸し主にせよ借り主にせよ、媒介契約時に賃貸契約の相手方との手数料の負担割合を宅地建物取引業者に確認しておく必要があります。

②権利金に基づく仲介手数料の上限額の計算
権利金を売買代金と見なして仲介手数料の限度額の計算をします。

550万円÷1.1=500万円…消費税抜き権利金

500万円×3%+6万円=21万円

課税事業者の場合:21万円×1.1=231,000円
免税事業者の場合:21万円×1.04=218,400円

となります。

【依頼者の仲介手数料上限額】
依頼者が負担する仲介手数料の上限額は、多い方の金額になりますので、上記の例の場合100万円に消費税を加算した金額になります。

代理により非居住用建物や宅地の賃貸借契約が成立した場合

貸借の代理により宅地建物取引業者が受け取ることのできる報酬の限度額は、家賃の1か月分に消費税を加算した金額になります。

権利金の授受がある場合は、媒介の場合と同じく、権利金を売買代金と見なして報酬の限度額の計算をします。

よって、非居住用建物や宅地の賃貸借契約が成立した場合に依頼者が負担する手数料の上限額は、媒介と代理は同じになります。

なお、宅地建物取引業者が代理の依頼者の相手方からも報酬をもらう場合であっても、宅地建物取引業者受け取れる報酬の限度額は家賃の1か月分に消費税を加算した金額です。
よって、代理の依頼者が負担する手数料の限度額は、代理の依頼者の相手方が支払う手数料の分だけ少なくなります。

居住用建物の賃貸借の手数料上限額

居住用建物の貸借契約の媒介、代理の手数料も賃料を元に計算します。

なお、居住用建物の場合、特例があり、また権利金を手数料の計算において考慮することはありません。

媒介により居住用建物の賃貸借契約が成立した場合

居住用の建物の賃貸借契約が成立した場合、宅地建物取引業者が受け取ることのできる報酬限度額は、賃料の1か月分になります。
報酬の総額が家賃の1か月分以内であれば、原則として、どのような割合で貸主、借主から報酬を受領しても問題ありません。

ただし、居住用建物については、依頼者の承諾を得ていない場合は、依頼者の一方から受領できる報酬額は1/2か月分が上限になります。

よって媒介により居住用建物の賃貸借契約が成立した場合に依頼者が負担する仲介手数料の上限額は、

・依頼者の承諾を得ている場合…賃料の1か月分
・依頼者の承諾を得ていない場合…賃料の1/2か月分

になります。

【具体例】
1か月分の賃料が50万円(消費税込み)の場合
50万円÷1.1=50万円(消費税抜き1か月分賃料)

依頼者が負担する仲介手数料の上限は、

・依頼者の承諾を得ている場合の仲介手数料上限…50万円+消費税
・依頼者の承諾を得ていない場合の仲介手数料上限…25万円(50万円×1/2)+消費税

になります。

代理により居住用建物の賃貸借契約が成立した場合

居住用建物の特例はありません。
賃料の1か月分に消費税を加算した額が宅地建物取引業者が受領できる手数料の上限になります。

依頼者が負担する手数料の上限額は、賃料の1か月分に消費税を加算した額になります。

なお、宅地建物取引業者が代理の依頼者の相手方からも報酬をもらう場合であっても、宅地建物取引業者受け取れる報酬の限度額は家賃の1か月分に消費税を加算した金額です。

よって、代理の依頼者が負担する手数料の限度額は、代理の依頼者の相手方が支払う手数料の分だけ少なくなります。

複数の宅地建物取引業者が関わる場合の報酬限度額

売買・交換においても貸借においても1つの取引に複数の宅地建物取引業者が関わることがありますが、複数の物取引業者が受領できる報酬の限度額合計は、1つの宅地建物取引業者が関わった場合と同じです。

よって、1つの取引に複数の宅地建物取引業者が関わっていても、依頼者が負担する手数料の限度額は変わりません。

宅地建物取引業者に必ず手数料の上限額を支払う必要はない

国土交通省が定める「宅地建物取引業者が宅地または建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」は、あくまで宅地建物取引業者が受け取ることのできる手数料の上限額を定めたものです。

基本的に宅地建物取引業者は上限額を請求しますが、手数料の値引き交渉は可能です。

ただし、売買や交換、賃貸借契約の段階で値引き交渉をすると契約破棄になる可能性が高くなりますので、手数料の交渉は媒介契約段階など必ず事前にしておくべきです。

なお、宅地建物取引業者に支払う手数料は成功報酬ですが、手付解除や違約解除など物件の引き渡しが無くても手数料がかかる場合があります。
物件の引き渡しが無いので手数料は減額されると考えられますが、注意が必要です。

契約無効、取消、契約解除・解約、契約後キャンセルしたときの仲介手数料は?

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