住宅ローンの基礎知識Ⅴ 返済比率、収入合算、返済期間

住宅ローンの基礎知識Ⅳ 個人信用情報、担保」に続き、ここでは住宅ローンの返済比率、収入合算、返済期間について紹介します。

住宅ローンの返済比率も金融機関の審査の重要な項目で、返済比率が高いと審査に通りにくくなります。

返済比率は所得が高くなるほど低くなりますが、返済比率の計算にあたり同居する所得ある配偶者や子どもの収入を合算して計算でき、これを収入合算といいます。

収入合算は返済比率の計算だけに使われる概念ではなく、所得総額の検討にも利用されます。

ローンの返済期間が長くなるほど支払う金利の総額が多くなりますが、月々の返済額は少なくなり、返済比率が下がります。返済期間の短縮や延長は原則として認められず、また住宅ローンの返済期間には限度があり、借入時、完済時の上限年齢も定められています。

◇返済比率

返済比率とは、年収に対するローンの返済額の比率をいいます。

返済比率=(住宅ローンの年間返済額+住宅ローン以外のローンの年間返済額)÷年収入×100
となります。
年収には配偶者などの収入合算者の年収を加える場合もあります。

返済比率が高いほどローンの返済に回す資金が多くなるため、自由に使えるお金が減ります。

住宅ローンは借金ですので、「いくらまで借りられるか」ではなく、生活に困らずに「返済できる借り入れはいくらならのか」が重要になります。

金融機関のローン審査においても返済比率は重視される審査項目で、適正な返済比率は年収や子どもの数、生活様式により異なります。

多くの金融機関では30~35%以下と設定していますが、一般的に20%以内に抑えられれば、安心してローンの返済が可能と考えられます。

これは、申込者の経済環境の変化や病気、金利上昇、税率、社会保険料率の変更など様々なリスクがあるためです。

フラット35では、返済比率が年収400万円未満で30%以下、400万円以上で35%以下の人しかローンの申し込みができなくなっています。

返済比率シミュレーション

下記の表は1,000万円を元利均等払、固定金利で借入した場合の月々の返済金額です。
この表により返済比率や月々の返済額が大まかにわかります。

20年返済で金利が1.5%とすると、月々の返済は48,255円になります。

また、3,000万円の家を全額住宅ローンで購入する場合、20年返済の1.5%の固定金利、元利均等返済で借り入れたとすると月々の返済額は、144,765円(48,255円×3,000万円÷1,000万円)、年間返済額は1,737,180円となり、年収600万円の人ですと、返済比率は約29%になります。

20年 25年 30年 35年
0.5% 43,793円 35,467円 29,919円 25,959円
1.0% 45,989円 37,687円 32,164円 28,229円
1.5% 48,255円 39,994円 34,512円 30,618円
2.0% 50,588円 42,385円 36,962円 33,126円
2.5% 52,990円 44,862円 39,512円 35,750円
3.0% 55,460円 47,421円 42,160円 38,485円
3.5% 57,996円 50,062円 44,904円 41,329円
4.0% 60,598円 52,784円 47,742円 44,277円

なお、実際の借入金利は1.5%でも、金融機関の審査においては3.5%や4%で返済比率が試算されます。

審査で4%で試算されるとすると、先ほどの例では、年間返済額は2,181,528円(60,598円×3,000万円÷1,000万円×12ヶ月)となり、返済比率は約36%(2,181,528円÷6,000,000円)となります。
自動車ローンや教育ローンがあるとさらに返済比率が悪くなりますので、返済比率だけを考慮するとローンを組めないかもしれません。

◇収入合算

住宅ローンの金額は、申し込み者の属性や不動産の担保価値のほか、申込者の所得によっても変わります。
そのため申込者の所得によりローン希望額が借りられそうにないときは、申込者以外の人の収入を合算することができます。
収入合算できる人は、原則として、配偶者もしくは親子で同居が条件となります。

収入合算の方法には「連帯保証型」「連帯債務型」「ペアローン」の3つがあります。

連帯保証型

収入を合算する人が、ローン申し込み者の連帯保証人になります。

旦那さんがローンの申込者であれば、奥さんもしくは同居の子供が連帯保証人になります。

この場合、連帯保証人となる収入合算者は、住宅の所有権を持ちません。また債務者ではないので住宅ローン控除を受けることもできず、団体信用生命保険に加入することもできません。

保証と連帯保証との違い

保証人と連帯保証人は、主債務者が返済できなくなった場合、どちらも債務を支払う義務を負いますが、主に次のような違いがあり、連帯保証人の方が保証人より重い責任があります。

・催告の抗弁権
主たる債務者が破産や行方不明になり、債権者が保証人もしくは連帯保証人に債務の支払い請求してきた場合、保証人であれば債権者に、「まずは主たる債務者に請求するよう」要求できますが、連帯保証人はそのような要求ができません。

・検索の抗弁権
主たる債務者に債務の支払い能力があるにもかかわらず、債権者に債務を返済せず、保証人に請求がきた場合、保証人であれば主たる債務者に支払い能力があることを理由に、債権者に対し、主たる債務者の財産に強制執行するように要求できますが、連帯保証人はこのような要求をすることができません。たとえ主たる債務者に支払い能力があっても主たる債務者に代わって債権者に債務の支払いをしなければなりません。

・分別の利益
主たる債務者が債務の支払いをしない場合、保証人が複数いれば、1人の保証人は保証人の頭数で割った金額のみを返済すれば義務を果たせます。
しかし、連帯保証人の場合は、複数人いても頭数割りはできず、各人が全額を返済しなければなりません(ただし、頭数割りした額を超える支払いをした部分に対しては他の連帯保証人に請求できます。例えば債務が1,000万円で連帯保証人が2人いて、1人の連帯保証人が全額支払った場合、もう1人の連帯保証人に500万円の請求ができます。)。

連帯債務型

住宅ローンの申込人が主たる債務者となり、収入合算者が連帯債務者となり、一つの住宅ローンに対してそれぞれが住宅ローン全額の債務者となります。

旦那さんが主債務者となり、奥さんが連帯債務者となる場合、住宅の所有権は、夫婦それぞれ持ち分に応じて所有します。

夫婦それぞれが債務者になりますので、二人とも住宅ローン控除の適用対象になります。

団体信用生命保険に関しては金融機関によって主たる債務者だけしか加入できない場合がありますが、この場合、夫婦連生団信に加入することで夫婦どちらかに万が一のことがあった場合でも、住宅ローン残高全額の保障が受けられます。

なお連帯債務型の場合、離婚しても簡単に債権債務関係が解消できない点は注意が必要です。夫婦それぞれが住宅ローン全額の債務者となっていますので、離婚しても二人の債務は継続します。金融機関は二人の収入を基にお金を貸していますので、連帯債務者から外れるためには金融機関と協議するか他の金融機関に借り換える必要があります。

連帯債務とは?

連帯債務とは、複数の債務者が同一の債務をそれぞれ独立に負担し、同等の返済義務を負うものです。債権者は主たる債務者だけでなく連帯債務者に対しても返済の請求ができます。

連帯債務には分別の利益がありませんので、連帯債務者の一人が債務の一部でも弁済すれば、頭数で割った金額を超えていなくても他の債務者に請求できます。

例えば1,000万円の負債で連帯債務者が2人の場合、1人の債務者が300万円を返済すると、返済額は頭数で割った500万円を超えていませんが、他の連帯債務者に150万円の請求ができます。

連帯保証と連帯債務の違い

連帯保証は、主たる債務者は1人で連帯保証人が主たる債務者を保証します。
連帯債務者は、主たる債務者が返済できなくなった場合にはじめて債権者から請求を受けますので、主たる債務者と連帯保証人は主従の関係になります。
よって連帯保証は、主たる債務が消滅すれば消滅し、主たる債務者に生じた事由はすべて連帯保証人にも効力が生じます。

一方、連帯債務は、連帯債務者が主たる債務者と連帯して同一の債務を負いますので、連帯債務者は主たる債務者と対等の関係になります。
そのため、債権者はどの債務者にも返済を求めることができ、債務者の1人について契約が無効・取消し、時効となっても、他の債務者には影響しません。

ペアローン

1つの住宅に対して、同居する夫婦もしくは親子と一緒にそれぞれが主たる債務者として2本立ての住宅ローンを組む方法です。それぞれが相手の連帯保証人となります。

例えば3,000万円の住宅を購入し、全額ローンを組む場合、旦那さんが2,000万円、奥さんが1,000万円それぞれにローン契約し、それぞれが相手の連帯保証人になります。

それぞれが住宅ローンの契約者となりますので、住宅の所有権はそれぞれの持ち分で所有し、2人とも住宅ローン控除の適用対象になり、さらに2人とも団体信用生命保険に加入できます。

ただしペアローンには、

・一定以上の所得のある人が2人必要
・2本のローン契約をするので登記費用や司法書士報酬、印紙代などが2倍かかる
・2人でそれぞれに団体信用生命保険に加入するので、どちらかに万一のことがあってもローン残高の全額が免除されるのではなく、債務免除は1人分だけである
・大きな借入をすることができるが、借り入れが大きくなる分、1人もしくは2人の所得が減った場合、返済負担が大きくなる

といったデメリットがあります。

また、住宅ローン控除を受けるためには建物を所有していなければなりません。どちらかが建物だけ、土地だけの所有者という場合、土地の所有者は住宅ローン控除を受けることができませんので注意が必要です。

◇住宅ローンの返済期間

住宅ローンの借入期間は最短5年、最長35年で自由に決めることができます。
多くの金融機関では住宅ローンの借入時の上限年齢を70歳とし、住宅ローン完済時の上限年齢を80歳までとしています。
フラット35でも完済時の上限年齢を80歳としており、最長期間は35年となっています。

借入期間を長くするほど月々の返済額が減りますので資金繰りは楽になりますが、定年後も返済予定期間に入る場合、返済をどうするか決めておく必要があります。
年金を全て生活費に充てることを予定している場合、60歳もしくは65歳までにローンを完済させる必要がありますので、40歳くらいからローンを組むと必然的に月々の返済額が多くなり、返済比率を考慮した場合、大きなローンが組めなくなります。

・借入期間の変更
住宅ローンの借入期間を短縮することはできません。どうしても短縮したい場合は、まとまった金額を繰上返済するか、借り換えする必要があります。
繰上返済する場合は、期間短縮型の返済を選ぶ必要があります。返済額軽減型では毎月の返済額が減るだけで、期間が変わらないからです。

なお金融機関によっては、期間短縮型の繰り上げ返済を取り扱っていないことがありますので、繰り上げ返済の予定が無くても、借入時に繰り上げ返済の方法を確認しておいたほうが良いでしょう。

また、借入期間を延長することもできません。月々の返済が厳しく、借入期間を延長したい場合は、他の金融機関で借り換えする必要があります。

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