住宅ローンの基礎知識Ⅳ 個人信用情報、担保

住宅ローンの基礎知識 個人信用情報、担保

住宅ローンの基礎知識Ⅲ 返済方法、つなぎ融資、分割融資、借り換え」に続き、ここでは住宅ローンの個人信用情報、担保について紹介します。

住宅ローンを申し込む場合、個人信用情報や担保は非常に重要な審査項目です。

多重債務者や延滞履歴のある人は審査に通りにくく、個人信用情報に問題が無くても、所得が少なかったり、担保評価が低いと審査に通りません。

◇個人信用情報

個人信用情報とは、銀行やクレジットカード会社、消費者金融、リース会社など各金融機関が信用情報登録機関に登録することが義務付けられている利用者の信用情報です。

クレジットカードや割賦販売、リース、各種ローン等の契約内容や支払い状況等の取引に関する顧客情報の登録を各金融機関各社に義務付けることで、利便性を高めています。

ローンの申し込みを受けると各金融機関は、事前審査の段階で必ず信用情報機関に登録された信用情報により、他の金融機関からの借り入れ状況や過去の延滞、事故履歴など申込者の信用力を判断します。

金融機関と債務者との信用取引は、信用情報機関によって支えられています。

なお、信用情報機関の信用情報の利用にはローン申込者の同意が必要なため、「個人信用情報利用に関する同意書」への署名押印が要求されます。

信用情報登録機関

信用情報登録機関には、「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」「株式会社日本信用情報機構(JICC)」の3つがあります。

全国銀行個人信用情報センター(KSC)

一般社団法人全国銀行協会が運営している個人信用情報機関です。 銀行が中心に加盟していますので、銀行系のクレジットカードや銀行からの借入経験のある人は、KSCに信用情報が登録されている可能性が高いです。

登録個人信用情報と期間

登録情報 登録期間
取引情報
借入やクレジットカード等の契約内容、返済状況(入金の有無、延滞・代位弁済・強制回収手続等の事実を含む)の履歴
契約期間中および契約終了日(完済されていない場合は完済日)から5年を超えない期間
不渡情報
手形交換所の第1回目不渡、取引停止処分
第1回目不渡は発生日から6か月を超えない期間、取引停止処分は処分日から5年を超えない期間
官報情報
官報に公告された破産・民事再生手続開始決定等
決定日から10年を超えない期間
貸付自粛情報
ローン申込者に浪費の習癖があることやギャンブル等依存症によりローン申込者やその家族の生活に支障を生じさせるおそれがあることから、ローン申込者を自粛対象者とする旨のローン申込者からの申告内容
申告日から5年を超えない期間

※各情報は、登録期間経過後に自動的に削除されます。
(引用:一般社団法人全国銀行協会

株式会社シー・アイ・シー(CIC)

クレジット会社の共同出資により設立された信用情報機関で、信販会社、百貨店、流通系・銀行系・家電メーカー系・自動車メーカー系クレジット会社、、リース会社、保険会社、保証会社、銀行、消費者金融会社、携帯電話会社などが主な会員です。

登録個人信用情報と期間

登録情報 保有期間
本人を識別するための情報
氏名、生年月日、性別、郵便番号、住所、電話番号、勤務先名、勤務先電話番号、公的資料番号等
契約期間中および契約終了後5年以内
契約内容に関する情報
契約日、契約の種類、商品名、支払回数、契約額(極度額)、契約終了予定日、登録会社名等
支払状況に関する情報
報告日、残債額、請求額、入金額、入金履歴、異動(延滞・保証履行・破産)の有無、異動発生日、延滞解消日、終了状況等
割賦販売法対象商品のお支払状況に関する情報
割賦残債額、年間請求予定額、遅延有無等
貸金業法対象商品のお支払状況に関する情報
確定日、貸付日、出金額、残高、遅延の有無等

(引用:株式会社シー・アイ・シー(CIC)

株式会社日本信用情報機構(JICC)

株式会社日本信用情報機構(JICC)は、消費者金融機関を中心にして作られた信用情報機関です。

株式会社日本信用情報機構(JICC)に加入する貸金業者一覧

登録個人信用情報と期間

登録情報 登録期間
ローン申し込み者を特定するための情報
氏名、生年月日、性別、住所、電話番号、勤務先、勤務先電話番号、運転免許証等の記号番号等
契約内容に関する情報等が登録されている期間
契約内容に関する情報
登録会員名、契約の種類、契約日、貸付日、契約金額、貸付金額、保証額等
契約日2019/9/30以前
契約継続中及び完済日から5年を超えない期間
契約日2019/10/1以降
契約継続中及び契約終了後5年以内(※)
返済状況に関する情報
入金日、入金予定日、残高金額、完済日、延滞等
契約日2019/9/30以前
契約継続中及び完済日から5年を超えない期間
(ただし、延滞情報については延滞継続中、延滞解消の事実に係る情報については当該事実の発生日から1年を超えない期間)
契約日2019/10/1以降
契約継続中及び契約終了後5年以内(※)
取引事実に関する情報
債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡等
契約日2019/9/30以前
当該事実の発生日から5年を超えない期間
(ただし、債権譲渡の事実に係る情報については当該事実の発生日から1年を超えない期間)
契約日2019/10/1以降
契約継続中及び契約終了後5年以内
(ただし、債権譲渡の事実に係る情報については当該事実の発生日から1年以内)
申込みに関する情報
ローン申し込み者を特定する情報(氏名、生年月日、電話番号及び運転免許証等の記号番号等)、並びに申込日及び申込商品種別等
照会日から6ヵ月以内
貸付自粛依頼情報
日本貸金業協会または全国銀行個人信用情報センターに貸付自粛依頼を申入れたことを表す情報
申請日から5年以内
※ローン申し込み者等から削除依頼があった場合はその時点まで

※包括契約について次のどちらかに該当するときは、契約終了後5年を経過したものと看做します。
① 残高「0円」となる入金後、解約することなく残高「0円」のまま5年を経過した場合
 (延滞解消または取引事実に関する情報が付帯している場合を除きます。)
② 契約後、一度も残高が発生することなく5年を経過した場合
(引用:株式会社日本信用情報機構(JICC)

信用情報結果に与える影響

他の金融機関からの借り入れがあれば返済比率など融資を受ける際に与信枠が減りますが、個人信用情報で注意すべきは金融機関とローン契約や実際の借り入れをしていなくとも

・クレジットカードを所有
・スマホの機器代金の分割払い

していれば、借りれがあると判断されます。

そのため、複数のクレジットカードを所有していれば与信枠の利用の有無に関係なく多重債務者とされる可能性があり、また、スマホの機器代金の支払いを3か月以上延滞した場合は、延滞を解消しても契約終了から5年間情報が残り、ローン契約する際にマイナス材料になります。

◇担保

担保とは、融資の際に、債務者が支払不能になった場合に備え、債権者があらかじめ債権保全のために、債務者に提供させる保証のことをいい、「人的担保」と「物的担保」があります。

人的担保とは、債務者が返済できなくなった場合に、代わりに返済してくれる保証人を確保しておくことをいいます。

物的担保とは、株式や預金、不動産など資産価値のある物を担保にすることです。債務者の所有する財産を担保にすることが多いですが、債務者の知人など第三者の所有する資産を担保にすることもあります。

住宅ローンは、融資額が大きく、返済期間が長期になるため、返済途中で債務者が病気や不慮の事故で亡くなったり、勤務先の会社が倒産して所得が減ったりなど様々なリスクが考えられるため基本的にローン対象の住宅を担保に提供するよう求められます。

担保が不要の住宅ローンもありますが、金利が高く、借入期間が短く、借入可能額も大きくありません。また審査も厳しくなります。

担保の設定に諸経費は掛かりますが、それほど大きな費用ではありません。きちんと返済している限り担保がとられることはありませんので、金利や借入期間、借入額のことを考慮すると、住宅ローンに関しては、無担保ローンのメリットはあまりありません。

担保の評価方法

担保は、金融機関の債権保全のための手段ですので、その評価は、売却したときの諸経費や税金、時の経過による減価、景気の悪化などによる地価下落などを考慮して決められます。

すなわち戸建ての建物は原価法、土地は路線価や取引事例比較法、マンションは取引事例比較法など、売買案件を扱う不動産業者と基本的な評価の考え方は同じですが、最終的な担保評価としては一定の掛け目をかけることで価値下落リスクを回避します。

この掛け目は金融機関や評価時の経済環境により異なりますが、60~70%としている金融機関が多いようです。

なお、担保評価で掛け目が適用されると必ず担保不足になり、不足分を自己資金で賄うか別の担保提供が必要になります。住宅ローンは金額が多きいため、不足の金額を自己資金や別の担保で賄うとなると一部の人しか住宅ローンを組めないことになります。
そのため金融機関はローン申し込み者の勤め先などを考慮し、一定の金額を加算するなど補正することで最終的なローン金額を決めています。

同じような評価の物件で年収や年齢に差が無くても公務員や上場企業勤務の人の融資可能額が大きくなるのは、このためです。

担保と認められない、担保評価がつかない物件

担保と認められない物件、担保評価がつかない物件とは、一言でいうと売りにくい、あるいは売れない物件です。

再建築不可物件はそもそも融資対象外で、違法建築や既存不適格物件(法令が改正されたことで基準に合わなくなった建物)についても、融資対象外としている金融機関が多いです。

なお、旧耐震基準の建物(建築確認申請の受理日が1981年5月31日以前)については、融資対象外としている金融機関もありますが、多くの金融機関では、独自の基準により厳しめの評価で対応しているようです。

また、自殺や他殺、火災などがあった物件も要注意です。これらは心理的瑕疵物件といわれ、なかなか買い手がつかないため相場より安い金額で購入できますが、金融機関によっては融資対象外としています。

心理的瑕疵の範囲は広く、また、どのような事象を心理的な瑕疵ととらえるかは個人差がありますが、購入を決めてから住宅ローンが組めないといったことがないよう、心理的瑕疵物件が融資対象になるかどうか、心理的瑕疵の範囲などをあらかじめ金融機関に確認するようにしてください。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする