不動産媒介契約の必要性、種類(一般媒介、専任媒介、専属専任媒介)、有効期間、報告義務、手数料など

宅地建物取引業者に媒介を依頼して不動産の売買、賃貸を行う場合、契約当事者は売買契約又は賃貸借契約と媒介契約の2つの契約を取り交わします。

売買契約又は賃貸借契約と媒介契約はそれぞれ別の目的で締結され、いずれも不動産取引において重要な意味を持ち、契約書にサインすることで権利と義務が生じます。その中には簡単に解除できなかったり、違約金や大きな義務を負わされるものもあります。

そのため安全な取引のために、契約にどのような意味があるのか?いつ交わすのか?どういった権利や義務が発生するのか?などを理解しておく必要があります。

ここでは不動産取引における媒介契約の必要性・目的、媒介契約の種類や有効期間、報告義務、手数料などについて紹介します。

 

媒介契約とは

媒介契約とは、宅地建物取引業者(不動産業者)に不動産の購入や売却又は交換、賃貸借の仲介業務を依頼する契約です。

不動産を売買又は交換、賃貸借する場合、個人では買い手や売り手、借主、貸主を探すことが難しく、不動産業者に相手を探してもらうことが一般的です。

依頼を受けた宅地建物取引業者は、宅地建物取引業法によって依頼者にとって不利にならない公正な契約の締結が法律で義務付けられています。

そこで、不動産をどのような条件で売買・交換又は賃貸借し、成約した時の報酬額をどのようにするのかといった内容を定めた媒介契約書を予め取り交わします。これを「媒介契約」といいます。

このように宅地建物取引業者と宅地又は建物の売買又は交換の仲介内容について合意したら媒介契約を締結し媒介契約書を取り交わしますが、媒介契約書は媒介契約締結後遅滞なくを作成する必要があります(宅地建物取引業法34条の2)。

実務上は、大手の宅地建物取引業者に媒介依頼した場合は媒介契約書を交わすことがほとんどですが、中小の宅地建物取引業者に媒介を依頼した場合、不動産の売主から依頼を受けた宅地建物取引業者は、物件調査などで媒介契約書が必要な事も多いため媒介契約書を結ぶことが多いですが、買主の場合は希望の物件が見つかり、買付証明を出すなど購入の意思が固まった段階で媒介契約書をかわすことが多いようです。

しかし、媒介契約書には不動産の媒介価格や仲介手数料、違約金に関する定めなど非常に重要な事が記載されています。買主である場合でも法律に従い媒介契約締結後遅滞なく媒介契約書を交わすようにしましょう。

なお、宅地建物取引業法では宅地又は建物の売買又は交換の媒介の契約を締結したときは、宅地建物取引業者に媒介契約書の作成が義務付けられています(宅地建物取引業法34条の2)が、賃貸借の媒介では媒介契約書の締結が義務付けられていません。特に賃借の場合は、口頭や簡単な申込書などで依頼することも多くなっています。
しかし、契約のトラブルを回避するためには、賃貸借の場合でも媒介契約書を結ぶようにしておくことをおすすめします。

媒介契約の必要性、目的は?

媒介契約は、宅地建物取引業者に依頼する業務の内容や仲介手数料などを書面で明確にすることで、仲介業務に関するトラブルを未然に防ぐためのものです。

そのため国土交通大臣が、消費者保護を目的に媒介業者が取引の成立に向けて尽力する契約だということで「標準媒介契約約款」を示しています。

宅地建物取引業法施行規則の規定による標準媒介契約約款(平成二年一月三十日建設省告示第百十五号)

このように媒介する宅地建物取引業者の義務が目立つ内容になっていますが、媒介契約の目的を別の角度からみると、媒介する宅地建物取引業者が仲介手数料の請求を確実に行うことができるようにすることです。すなわち、宅地建物取引業者は媒介契約を締結しなければ、報酬を受領できませんので、媒介する宅地建物取引業者に媒介契約書に定められている一つひとつの義務を履行させることでし、仲介手数料を確実に受け取れるようにしています。

 

媒介契約の種類

媒介契約には「専属専任媒介契約」、「専任媒介契約」、「一般媒介契約」の3種類があります。

「契約期間」「指定流通機構(レインズ)への登録義務」「状況報告の義務」「申込があった場合の報告義務」「複数の宅地建物取引業者と同時に媒介契約」「自分で見つけた契約相手と契約」といった点で違いがあり、専属専任媒介契約、専任媒介契約については「契約期間」「複数の宅地建物取引業者と同時に媒介契約」「指定流通機構(レインズ)への登録義務」「申込があった場合の報告義務」について規制があり、これらの規制に反する依頼者に不利な特約は無効となります(依頼者に有利な特約は有効)。

さらに専属専任媒介契約、専任媒介契約とも依頼者は同時に複数の宅地建物取引業者に媒介を依頼できません。

また専属専任媒介契約においては依頼者は宅地建物取引業者が探した相手方以外の人と契約することができません。

なお一般媒介契約には、明示型と非明示型があります。明示型では依頼者に宅地建物取引業者に対して、他にどの宅地建物取引業者に仲介を依頼しているのかを通知する義務がありますが、非明示型であれば、他の宅地建物取引業者に仲介を依頼しているかどうか、依頼しているならどの会社に依頼しているかについて通知する義務はありません。

媒介契約の規制、複数業者への依頼、自己発見取引の可否

 専属専任媒介契約専任媒介契約一般媒介契約(※)
規制有効期間3か月以内(依頼者からの申出あれば更新できる。更新の期間も3か月以内)3か月以内(依頼者からの申出あれば更新できる。更新の期間も3か月以内)規制なし
不動産流通機構(レインズ)への登録義務  規制なし  (登録してもOK)契約日から7日以内(休業日除く)契約日か5日以内(休業日除く)
業務処理状況の報告義務1週間に1回以上(口頭でもOK)2週間に1回以上(口頭でもOK)なし
申込があった場合の報告義務遅滞なく報告遅滞なく報告遅滞なく報告
 複数の宅地建物取引業者と同時に媒介契約できるできないできない
自分で見つけた契約相手と契約できるできるできない

※ 明示型、非明示型ともに共通。

有効期間

専属専任媒介契約、専任媒介契約とも契約期間は3か月を超えることができません。3か月を超える契約をしても強制的に3か月となります。
また契約の自動更新はできず、依頼者からの申出がある場合だけ契約更新することができます。契約を自動更新する旨の特約をしても無効です。また更新後の契約期間も3か月以内になります。

一般媒介契約には、有効期間についての法律上の制約はありません。国土交通省の定める標準媒介契約約款では、第8条に「3ヶ月を超えない範囲で、」とありますが、3か月といった法律の縛りはありません。

指定流通機構(レインズ)への登録義務

指定流通機構とは宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣が指定した不動産流通機構です。不動産業界内ではREINS(レインズ(Real Estate Information Network System))と呼ばれ、不動産業者のみが登録・利用できる不動産ネットワークで、登録すると全国の不動産売物件、賃貸物件の情報、売買事例が閲覧できます。

専属専任媒介契約、専任媒介契約を締結した場合、宅地建物取引業者はより早く、より広くから相手方を見つけることができるよう指定流通機構(レインズ)に一定期間内に場所、規模、売買価額等一定の事項を登録する義務を負います。

一定期間内とは、専属専任媒介契約の場合、媒介契約締結日から5日以内、専任媒介契約の場合、媒介契約締結日から7日以内です(契約初日は算入せず、業者の休業日は含みません)。

一定事項とは、場所、規模、形質(土地の形状、農地・山林など)、価額(交換の場合は評価額)、法令に基づく制限で主要なもの、専属専任媒介契約の場合はその旨です。
所有者の氏名、登記された権利の種類等は不要です。

一般媒介契約の場合は、指定流通機構に登録する義務はありませんが、指定流通機構に登録することもできます。

指定流通機構に登録した場合は、宅地建物取引業者は登録した情報の概要を記載した登録証明書を指定流通機構からもらい、売主に遅滞なく渡す必要があります。
(賃貸物件の登録証明書の発行は任意です。)

また契約が成立した場合は、宅地建物取引業者は物件の取引価額、契約成立年月日などを遅滞なく指定流通機構へ通知する義務があります。

業務処理状況の報告義務

宅地建物取引業者は、専属専任媒介契約を締結した場合1週間に1回以上、専任媒介契約を締結した場合2週間に1回以上の頻度、で依頼者に業務処理状況について報告する義務があります。

申込があった場合の報告義務

媒介契約の目的となる宅地建物の購入・交換の申込みがあった場合、宅地建物取引業者は遅滞なく依頼者にその旨を報告する義務があります。

この規制は、専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約ともに適用されます。

複数の宅地建物取引業者と同時に媒介契約

これは宅地建物取引業者に対する規制ではなく、依頼者に対する制約です。
専属専任媒介契約、専任媒介契約では、依頼者は媒介契約期間中は1つの宅地建物取引業者としか媒介契約を結べません。
媒介契約期間中に複数の宅地建物取引業者と媒介契約を結ぶ場合は、一般媒介契約にする必要があります。

自分で見つけた契約相手と契約

こちらも宅地建物取引業者に対する規制ではなく、依頼者に対する制約です。
専任媒介契約、一般媒介契約では依頼者が自分で探してきた相手と契約することができますが、専属専任媒介契約では、媒介契約を結んだ宅地建物取引業者が見つけた相手としか契約を結べません。

媒介契約に手数料はかかるのか?媒介契約の種類により手数料は違うのか?

依頼者が宅地建物取引業者に支払う仲介手数料は、宅地建物取引業者の媒介により売買や交換、賃貸借契約が成立した場合の成功報酬です。

よって、媒介契約を結んでも売買や交換、賃貸借の契約が成立しない限り、仲介手数料を支払う必要はありません。物件調査費など宅地建物取引業者にかかった経費も、原則として負担する必要はありません。

媒介による報酬額(仲介手数料)は、その上限額が国土交通大臣が定めた「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額 第二、第四」に示され(宅地建物取引業法46条2項)、媒介契約の種類により仲介手数料の計算方法が変わることはありません。

報酬額(仲介手数料)は、媒介契約書に記載され(宅地建物取引業法34条の27項)、宅地建物取引業者がこの金額を超えて仲介手数料を要求すると、受領の有無に関係なく宅地建物取引業法違反になります。