下屋とは?下屋の種類・形状、メリット・デメリット、注意点など

下屋の意味、種類・形状、メリット・デメリット、下屋を付ける際の注意点など

住宅の屋根のひとつに「下屋(げや)」があります。なんとなく耳にしたことはあっても、具体的にはよく理解していない方は多いと思います。

下屋は玄関や勝手口などメインとなる屋根とは別の場所にある屋根を指しており、控えめながら無いと不便を感じる重要なものです。

ここでは、下屋について種類や形状、メリット・デメリット、下屋を付ける際の注意点などについて紹介します。

総二階の建物

下屋とは

下屋とは、建物の母屋(おもや)から張り出すように作られた屋根です。

具体的には、1階の床面積に対して2階の床面積が小さい場合など、上の階がない部分にくる下の階の屋根のことです。

建物が2階建てなら下屋は1階に、建物が3階建てなら下屋は2階や1階に作られます。

対して、上から投影した時に2階の屋根しか見えない、つまり1階と2階の床面積が同じで壁がフラットの住居を総二階と呼びます。

下屋の形状と種類

下屋の形状には「片流れ」「切妻」「寄棟」「パラペット」「入母屋」などがあります。

下屋の形状を2階の母屋の屋根と同じにして統一感を持たせたり、母屋とは変えて外観デザインの変化を持たせることが可能です。

片流れ
屋根の流れが片側だけに伸びるシンプルな形状です。建物の外壁から外側に向かって勾配になっている形が一般的です。
2階の床面積が1階の床面積より狭い時によく使われます。

・切妻
屋根の頂点から左右に分かれて伸びる形状です。玄関やポーチなどを切妻屋根にすると、雨が左右に流れていくため玄関先で雨に濡れるのを避けることができます。

・寄棟
4方向に屋根が伸びる形状で、正面から見ると台形、側面から見ると三角形の形をした下屋です。最も高い場所には水平な陸棟(ろくむね)があります。コストはかかりますが雨や雪、風が4方向に分かれ、風雨を多面で受けるため、強風や大雨による衝撃を分散できるメリットがあります。

・パラペット
パラペットとは、扶壁(ふへき)、手すり壁、胸壁ともいわれ、外観はビルのように外壁が垂直に立ち上がり、その壁の後ろに片流れなどの屋根があります。
屋根が落ち葉や泥水などで汚れることを防げるなど美観面でメリットがあります。

・入母屋
神社仏閣の屋根によく見られる純和風の屋根で、切妻と寄棟を合わせたものになります。下屋の場合の入母屋は3方向に屋根が伸びていきます。

下屋が作られる場所

2階建て住宅を例に紹介します。

・玄関・ポーチ
玄関やポーチは雨が直接当たらないように下屋を作るケースが多いです。

・車庫・物置
屋根付きの車庫や物置を間取りに入れる場合、下屋を作ることで車庫や物置が住宅とつながり、雨に濡れることなく車の乗り下りができ、天候を気にすることなく物置を利用できます。

・縁側・ウッドデッキ・テラス
縁側やリビング外のウッドデッキ・テラスの雨除け、劣化を防ぐために作られます。

・勝手口
勝手口の下屋は、ゴミ出しなどでドアを開けたときに雨に濡れるのを防ぐために作られます。

・和室など1階の居室
和室に床の間や仏壇を設ける場合、その頭上をできれば「人が歩かない」ようにするという考えから、2階部分を計画せず、下屋を作ることがあります。

下屋ができる理由

下屋は意識して作る場合もありますが、図らずも「できてしまう」こともあります。

・建築面積の調整
水回りを1階にまとめたい場合、2階より1階の部屋が多くなることがあります。たとえば、4人家族が、LDKと水回り、寝室、子供部屋の間取りに決め、水回り、LDKを1階にする場合、部屋の大きさにもよりますが2階は夫婦寝室と子供部屋だけとなり、1階の面積が広くなることが少なくありません。

下屋ができないように、1階の面積と同じ広さで2階を計画し総二階の建物にする方法もありますが、2階を広くすれば建築面積が広くなり追加の建築代金が必要になります。

このように、限られた予算の中で住宅建築を計画する場合、余分な建築面積の削減・調整を行うことで、下屋が作られることがあります。

・外観デザイン
数寄屋造りなど和風住宅においては、外観デザインのために下屋をつくることがあります。また、西洋デザインであっても、玄関に下屋をつくることで、全体のデザインにまとまりを持たせることができます。

・斜線制限
隣地の採光や通風を確保するために、道路斜線・隣地斜線・北側斜線等、道路境界線または隣地境界線からの距離に応じて建物の各部分の高さを規制する斜線制限というものが建築基準法にあります。

道路や隣地の境界線と建物との間に十分な距離がない場合、斜線制限により一定の勾配で記された線の範囲内に建物が建てられません。

斜線制限により2階と境界線との間に距離が生じ、1階の床面積が2階より広くなり、広くなった部分を覆うために下屋が必要になります。

下屋のメリット

・空間の活用
下屋によりできた空間で寛いだり、家事をしたりなど、生活にゆとりができます。
また、自転車やその他の日用品などを収納しておくスペースとして有効活用できます。

・雨避け
自転車や車、洗濯ものなど、下屋があることで雨避けができ、濡らしたくないものを守れます。

・夏場は室内が涼しくなる
下屋の軒の出(外壁から下屋の先までの距離)を出すことで、下屋が庇の代わりをします。下屋のかかる空間に日光が直接当たらずに済むので、夏場に室内が高温になることを緩和できます。

・収納スペースができる
1階部分だけの屋根(下屋)がある場合、下屋の下の空間を収納スペースにすることができます。
階段も不要で施工費用が節約でき、上り下りが必要ないので重たい荷物の出し入れが楽です。

下屋のデメリット

・建築費が増す
総二階の家と比べると屋根が増えますので、大工工事や内外装工事などの施工と材料が追加でかかり、建築費が増えます。

・雨漏りの危険がある
総二階は1階と2階の枠組みが同じなので雨は全て2階の屋根がカバーします。2階の屋根の納まりがしっかりしていれば一階部分の雨漏りは皆無です。
しかし下屋は、母屋と接合部ができるため、適切な施工されていないと接合部分から雨漏りが発生するリスクがあります。、定期的に接合部に施された板金やその他屋根材を点検・メンテナンスを心がける必要があります。

・居住空間が狭くなる
敷地に余裕がある場合や高さ制限により必然的に下屋ができる場合は関係ありませんが、余分に雨よけの空間を作るなどそうでない場合、床面積を減らさなければならないため居住空間が狭くなります。

下屋を付ける際の注意点

下屋を付けるときにはどのようなことに注意すればよいか、いくつかポイントをご紹介します。

・デザイン性
下屋を作ることで家のイメージが変わります。イメージしにくい場合は、施工業者や設計事務所に外観パース(建物が立体的に描かれた図面)をお願いしてみましょう。
追加料金がかかる場合は、立面図や平面図、屋根伏図を貰いそれを外壁メーカーに送付することで無料で外観パースを作成してもえらます。
外壁は簡単に変えることができますが、屋根形状を変えることはとても難しいことです。
事前に屋根の大きさ、二階とのバランスなど慎重に検討しておいた方が良いでしょう。

・建築基準法、消防法違反
地域やその下屋のある空間の用途により建築基準法の制限が加わります。

面積:物干しスペースや倉庫など下屋下のスペースを屋内用途に使用しない場合は、その部分は床面積に含めない緩和がありますが、下屋の用途によっては建物の延床面積に含めなければならないものもあり、延床面積が増えると、建ぺい率や容積率の規制にかかることがあります。

仕上げ材料:下屋のあるスペースを車庫にする場合、消防法の規制にかかるため仕上げ材料を不燃材料にする必要があります。

・建物の固定資産税評価額
下屋の規模や構造により固定資産税評価額が変わります。

また、固定資産税の課税対象になるか否かの検討も必要です。

「3方向以上壁があり、屋根があるもの」、「基礎等で土地に固定されて容易に移動できないもの」、「居住・作業・貯蔵などの目的に応じて利用できる状態になっているもの」この3つの要件を全て満たす物は家屋として判断され固定資産税がかかります。

下屋の下に壁が3方向以上あり、下屋が地盤に定着性のあるもので仕上げられ、家屋の目的に利用できる場合は固定資産税がかかります。

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