ドーマーのある洋風の家は外観がお洒落なため希望される方も多くいらっしゃいます。
しかし、雨漏りやメンテナンスの手間など設置においては注意すべきことが色々あります。
そのため、ドーマーとはどういうものなのか、種類、メリット・デメリット、注意点などを紹介します。
ドーマーとは
屋根の上にさらに小さな屋根がついている小屋のようなものを見かけたことがあると思いますが、これがドーマー(dormer)です。
中世ヨーロッパの建築によく見られ、明かり採りや通気を目的として設置されています。
ドーマーは、ドーマーウィンドウともいい、名前からすると「屋根に付いた窓」のことですので、ルーフウィンドウや天窓もドーマーになります。
しかし、一般的には窓本体だけを指すのでなく、その窓を設置するための立ち上がりの壁や屋根も含めてドーマーと呼んでいます。
ドーマーの種類
・ゲーブルドーマー
本屋根に三角屋根の小屋を突き刺したように見えるドーマーです。
・ピークドーマー
本屋根に三角屋根を突き刺したように見てるドーマーです。
ゲーブルドーマーから側面の壁が無くなった形です。
・ジェットドーマー
勾配の違う2枚の屋根に窓が挟まったような外観です。
本屋根を覆うようにゆるい勾配でドーマーの屋根が葺かれますので、本屋根の勾配が緩やかな場合、ドーマーの屋根の勾配が確保できないことがあります。
・ルーフドーマーウィンドウ
ゲーブルドーマー、ピークドーマー、ジェットドーマーなど屋根の上にドーマーウィンドウが完全に乗った形のものをいいます。多くのドーマーがこの形状です。
・ウォールドーマーウィンドウ
ルーフドーマーウィンドウのように屋根に完全に乗った形のものではなく、壁の軒部分から立ち上がる形状のものです。
ドーマーのメリット
・外観が良くなる(ヨーロッパ調の家、洋式住宅)
ドーマーの一番のメリットです。中世ヨーロッパを彷彿とさせるお洒落な外観が童心をくすぐります。
・採光量が多い
屋根に窓が増えることで入光量が増えます。特に冬の採光量を増やすのに役立ちます。
・通気が良くなる
ドーマーの窓を空けることで、通常の窓では排出しきれない、天井に溜まった空気の換気に役立ちます。
・居住区の拡張(屋根裏の空間を広げる)、天井高不足解決
屋根裏部屋は屋根の勾配のため、裾の部分では天井が低くなり、スペースが狭くなりますが、ドーマーを設置することでドーマーの分だけスペースを広くすることができます。
・屋根の劣化状態を確認する点検窓として利用できる
家の中から簡単に屋根に上がれるようになりますので、屋根の点検がしやすく、屋根の劣化を早期に発見できます。
・季節による採光具合が理想的
ドーマーの窓は垂直に付くので、夏はほぼ真上からの直射日光を遮ることができます。また、冬は穏やかな日差しが遠くまで入り込んで室内を暖めてくれます。
ドーマーのデメリット
・雨漏りリスク
ドーマーの設置により屋根の施工面の凹凸が激しくなるため、防水シートの施工が難しくなります。
山折り谷折りが激しい箇所は何枚も防水シートを重ねますが、構造上剥がれやすく、また、地震や台風時に屋根材が変異することで防水シートが剥がれることもあり、雨漏りのリスクが高くなります。
・掃除・メンテナンスに手間がかかる
ドーマーの設置により屋根の凸凹が激しくなり、ゴミだまりができやすくなります。ゴミが溜まると水分を含んでこびりつきを増長させ、防水を傷める原因にもなるため頻度の高い定期的なメンテナンスが必要になります。
・太陽光パネルの設置に邪魔
太陽光パネルは、あらかじめ決められた電圧を賄うための枚数を設置しますので、一定の屋根面を必要としますが、ドーマーがあることで、必要枚数が確保ができなくなることがあります。
細切れに、ドーマーを避けて設置することもできますが、別途費用が発生する可能性があります。
・部屋が暑くなる
採光量が増えることで、ドーマーのある室内が高温になります。そうなると内部は高温になり、特に上方は温度の高い空気が溜まるので、大変暑くなります。
・台風や暴風での破損リスク
ドーマーの設置により、風の当たる面積が増え、さらに風力が多方向からかかるようになり、劣化が早まります。
特に台風や暴風時に飛来物が当たりやすくなり、屋根材やガラス窓の破壊リスクが高まります。
ドーマー設置で抑えるべきポイント
・風致地区でのドーマー取り付け
風致地区とは自然美を維持する目的の地区です。
具体的な規制は、地方公共団体の条例によりますが、樹木の伐採のみならず、建築物の高さや建蔽率、土石類の採取、水面の埋立て、建築物の色の変更など、風致の維持等に配慮する必要があります。
ドーマーは外観上のデザインが華やかになりがちですので、和風建築を保護する地域では許可が下りないことがあります。
・天窓やハイサイドライトでの代用
ドーマーが設置できない場合は、天窓(トップライト)や高窓(ハイサイドライト)で代用することも一案です。ただし、天窓は採光量が多くなりますが、夏は直射日光を取り込んでしまいます。
高窓は、プライバシーを守りつつ採光できるメリットがあります。
・建築基準法に違反してしまう可能性
小屋裏は、原則として延床面積に含まれませんが、天井高が1.4メートルを超えたり、窓の開口面積が0.45平方メートルを超えると延床面積に算入されます。
その結果、容積率を超過して建築基準法違反になることがあります。また、小屋裏が面積に算入されると建物の階数が増え、構造計算のし直しが要求されることになり、建物全体の部材を大きくしたり本数が増えることがあります。
さらに、固定資産税や火災保険料が上がる可能性もあります。
・屋根の形状によっては設置が不要
ドーマーはどんな屋根にも設置することは可能ですが、外観のデザインを重視することを考えると切妻屋根などの勾配屋根に付けるのが見栄えよく綺麗です。
陸屋根の場合、道路から見えませんので、機能は活かせても見栄えは変わりません。
越屋根は大屋根の棟の上にさらに屋根を架けたものですので、もともと換気や採光などの役割を担っていますので、ドーマーは不要です。